GABA受容体がメカノトランスダクションに関わっているかも?

GABA(γ-アミノ酪酸)の受容体にはGABA-A受容体(イオンチャネル型)とGABA-B受容体(GPCR型)の主に2つのタイプがあるが,中国・華中科技大学の研究グループがNature Communications誌(2025年11月号)に発表した論文では,なんとGABA-B受容体が牽引力やせん断応力などの機械的力によっても活性化されることが示された.

GABA-B受容体は,GABAが存在していなくても機械刺激に対して活性化することが実験的に示されており,このGABA非依存的な活性化は受容体のGB1サブユニットとインテグリンとの直接的な相互作用によって媒介されることが示されている.

注目すべきは,GABA-B受容体はインテグリンが感知した機械的信号を下流のGタンパク質へ伝達(transduce)する役割を担っており,単体でメカニカルな力を直接感知する「メカノセンサー」として機能するのではないという点だ.言い換えれば,インテグリンとGABA-B受容体が複合体を形成してはじめて機械的信号を細胞内シグナルに変換できる.この点において,メカノセンサーとして報告されている他の多くのGPCR(AT1R,H1R,GPR68など)とは,微妙に性質が異なる.

論文の後半では初代培養アストロサイトを用いた検証を行っており,せん断応力によってGABA非依存的にアストロサイトが活性化され,反応性アストロサイトの増殖が促進されること,そしてこの増殖プロセスにはGABA-B受容体が必須であることを明らかにしている.アストロサイトにはPiezoチャネルをはじめとする他のメカノセンサーも機能しているため,すくなくともアストロサイトのリモデリングには複数のメカノトランスダクション機構が関わっているのかもしれない.